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人間中心設計とビジュアライゼーション:伝わるグラフの基本

目次[非表示]

  1. 1.はじめに
  2. 2.人間中心設計
  3. 3.ビジュアライゼーションにも活用できる考え方
    1. 3.1.エドワード・タフティ
    2. 3.2.Data-Ink Ratio:無駄な装飾を減らす
    3. 3.3.Chartjunk:過剰な装飾は理解を邪魔する
    4. 3.4.Lie Factor:グラフは「嘘」をつける
  4. 4.まとめ
    1. 4.1.参考文献

はじめに

皆さんは、「人間中心設計(Human Centered Design:HCD)」という考え方をご存じでしょうか。

この言葉を聞くと、「ユーザーファースト」や「ユーザー体験(UX)」、「ユニバーサルデザイン」といった言葉を思い浮かべる方もいるかもしれません。

私たちは日々、さまざまなサービスやシステムを利用しています。しかし、その中で「使いづらい」「分かりにくい」と感じた経験はないでしょうか。

そうした問題を解決するための考え方の1つが、人間中心設計です。

人間中心設計

人間中心設計とは、

「対話システムの利用に焦点をあて,人間工学やユーザビリティの知識や技法を使って,そのシステム等を使いやすくすることを目指す設計アプローチ」

として定義されています(黒須ほか,2013)。

少し難しく感じますよね。簡単に言えば、「モノ中心ではなく,使う人を中心にしたモノづくり」という考え方です。

技術や機能だけを重視するのではなく、「誰が使うのか」「どのように使うのか」を考えながら設計し、改善を繰り返していくプロセスを大切にします。

この人間中心のプロセスを意識することで、ユーザーにとってより良い体験を提供できるようになります。

人間中心設計の6つの原則

人間中心設計には、以下の6つの原則があります。

  • 原則1:ユーザーやタスク、環境に対する明確な理解をもとにデザインする

  • 原則2:設計や開発の期間を通して、ユーザーを参画させる

  • 原則3:設計は、人間中心的な評価によって駆動され,洗練される

  • 原則4:プロセスは反復的である

  • 原則5:設計はユーザー・エクスペリエンス全体に焦点を当てる

  • 原則6:設計チームは、多様な専門領域の技能と視点を持つ人材によって構成される

特に重要なのは、

「ユーザーを継続的に観察し,評価しながら改善を繰り返す」

という考え方です。

ビジュアライゼーションにも活用できる考え方

人間中心設計の考え方は、ビジュアライゼーション(データ可視化)にも活用できると考えています。

ビジュアライゼーションにおいても、「見やすさ」や「理解しやすさ」は非常に重要です。

どれだけ優れたデータを扱っていても、読み手に正しく伝わらなければ意味がありません。

そこで今回は、人間中心設計と相性の良い、エドワード・タフティ(Edward Tufte)が提唱した以下の3つの考え方を紹介します。

  • Data-Ink Ratio :無駄な装飾を減らす

  • Chartjunk:過剰な装飾は理解を邪魔する

  • Lie Factor:グラフは「嘘」をつける

エドワード・タフティ

本題に入る前に、これらの考え方を提唱したエドワード・タフティ(Edward Tufte)について簡単に紹介します。

エドワード・タフティは、統計学と芸術の両分野で知られる研究者であり、イェール大学の名誉教授です。データ可視化の分野に大きな影響を与えた人物として知られ、代表作 The Visual Display of Quantitative Information をはじめとする著作は、現在でも古典的名著として高く評価されています。ニューヨーク・タイムズ紙からは「データ界のレオナルド・ダ・ヴィンチ」と評されたことでも知られています。

1942年にミズーリ州カンザスシティで生まれ、スタンフォード大学で統計学を学んだ後、イェール大学で政治学の博士号を取得しました。その後はプリンストン大学で政治経済学やデータ分析を教えながら、情報デザインや統計図表に関する研究を発展させました。

Data-Ink Ratio:無駄な装飾を減らす

Data-Ink Ratioとは、グラフ全体に使われているインク(描画要素)のうち、データそのものを表現するために必要なインクの割合を指します。

優れたグラフを作成するためには、以下のような工夫が推奨されています。

  • データ以外の不要な線や色を減らす

  • 背景の塗りつぶしや過剰な枠線を削除する

  • 同じ情報を何度も繰り返すような冗長な表現を避ける

こうした工夫によって、読み手の視線が自然とデータそのものに集中し、伝えたいメッセージがより明確になります。

Chartjunk:過剰な装飾は理解を邪魔する

Chartjunkとは、直訳すると「グラフのガラクタ」です。

つまり、新しい情報を何も伝えない不要な装飾のことを指します。タフティは、代表的なChartjunkとして以下のような例を挙げています。

1. チカチカする斜線や網掛け(モアレ振動)

視覚的な錯覚を引き起こし、見づらさや不快感につながります。

色を使う場合は、落ち着いたグレーの濃淡などを使う方が効果的です。

2. 濃くて太いグリッド線

グリッド線がデータより目立ってしまうと、グラフ全体が散らかって見えてしまいます。

必要最低限にするか、場合によっては削除することも重要です。

3. 自己主張が強すぎるデザイン(ダック)

データよりもグラフィック自体が目立ってしまう表現です。

例えば、不要な3D表現などは、データ本来のメッセージを分かりにくくしてしまう原因になります。

Lie Factor:グラフは「嘘」をつける

グラフの見た目(線の長さや面積)の変化率が、実際の数値の変化率と一致していない場合、グラフは「嘘」をついている状態になります。

この歪みの大きさを測る指標が Lie Factor です。

この値が「1」であれば、グラフは正確に数値を表現していると言えます。

しかし、例えば実際の数値は53%しか増えていないにもかかわらず、グラフ上では783%も大きく見せてしまうと、Lie Factorは14.8となり、大きく誤解を与えるグラフになってしまいます。

気を付けるポイント

  • 数値の大きさは、グラフ上の長さや面積と正比例していなければならない

  • 面積(2次元)や立体表現(3次元)を使うと、数値の差が過剰に強調されやすい

  • 「見栄え」よりも「正確さ」を優先することが重要

まとめ

人間中心設計は、「使う人」を中心に考えながら、改善を繰り返していく考え方です。

ビジュアライゼーションにおいても、ただ見た目を整えるだけではなく、

  • 読みやすいか

  • 誤解を与えていないか

  • 本当に伝えたい情報が伝わるか

を意識することが重要になります。

今回紹介したタフティの考え方は、ユーザーにとって理解しやすい可視化を行うための重要なヒントになると思います。

最後に、自分のダッシュボードやグラフを見直すときは、次のような問いを持ってみるとよいかもしれません。

☑この装飾は本当に必要か?

☑データよりも目立っている要素はないか?

☑見た人が迷わず内容を理解できるか?

☑伝えたいメッセージが一目で伝わるか?

見た目をかっこよくすることも大切ですが、それ以上に「見る人が正しく理解できるか」を意識することが、人間中心のビジュアライゼーションにつながるのだと思います。

さらに詳しく知りたい方は、ぜひ『 The Visual Display of Quantitative Information』を読んでみてください!

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

この記事はData Saberコミュニティ活動の一環として執筆しました。

参考文献
  • 松浦啓, 伊藤潤, 中谷桃子. (2025). 人間中心設計(HCD)初学者は「人間中心」の意味をどのように捉え,学びはじめるのか?. 人間中心設計, 21(1), 25-33.

  • 黒須正明, 松原幸行, 八木大彦, 山崎和彦. (2013). 『人間中心設計の基礎』. 近代科学社.

  • Web担当者Forum. 「ユーザビリティとは何か」(閲覧日:2026年5月28日)https://webtan.impress.co.jp/e/2011/12/20/11817

  • Tufte, E. R. (2001). The Visual Display of Quantitative Information (2nd ed.). Graphics Press.

  • 特定非営利活動法人 人間中心設計推進機構 「人間中心設計とは何か」(閲覧日:2026年5月28日)https://www.hcdnet.org/hcd

  • Datacated, “Edward Tufte: Data Visualization Pioneer”(閲覧日:2026年5月28日)https://datacated.medium.com/edward-tufte-data-visualization-pioneer-e70eb3a8e2f0

Tsukuda
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