2022/11/16に開催されたQualtrics社のイベントに参加してきましたので、超訳でレポートします。
画像掲載がないのですが、トレンドや事例の雰囲気が伝われば嬉しいです。
複数回に分けてお伝えします。
アジェンダ
13:30-14:20
クアルトリクス セッション
熊代 悟 // クアルトリクス合同会社 カントリーマネージャー
市川 幹人 // クアルトリクス合同会社 ソリューションストラテジー シニアディレクター
中嶋 祐一 // クアルトリクス合同会社 ソリューションエンジニア ディレクター
14:20-15:00
「NPS 3.0~『顧客愛』で成長を遂げる企業の最前線」
大越 一樹 氏 // ベイン・アンド・カンパニー パートナー
15:00-15:20
お客様事例講演:カスタマーエクスペリエンス(CX)
山田 篤 氏 // 株式会社ビックカメラ 経営企画本部 経営戦略部 分析企画課
15:35-16:15
お客様事例講演:従業員エクスペリエンス(EX)
和田 慎也 氏 // 株式会社クボタ 人事・総務本部 人事部 人事企画課 課長
16:15-16:55
「もうひとつの企業変革論 ー未来への適応力を構築するー」
宇田川 元一 氏 // 埼玉大学 経済経営系大学院 准教授
イベント会場到着が14時と遅れたため、一つ目の途中からご紹介していきます。
クアルトリクスセッション
Qualtrics Cross XM紹介 市川 幹人/中嶋 祐一
Cross XMはEX(従業員エクスペリエンス)とCX(顧客エクスペリエンス)のデータを統合して分析する機能です。
本セッションをざっくりまとめます。
- 従業員満足度が上がれば、業績も上がると30年以上前から言われている。
- EX/CXの改善に強くコミットしているリーダー企業はここ10年で業界平均を超える成長を遂げている。
- しかし、取組みにあたっては数値評価が難しく、EXとCXの相互関係が不明瞭であったり、継続的なモニタリングのためのコストが高いと感じる企業が多い。
- 取り組んだとしてもハードルとして、組織の壁/データの分散/調査対象・時期の不一致などがあがってくる。これらを乗り越えるには経営トップのコミットメントが重要。
- そんな中でも、EX/CXの相関を明らかにする事例が出てきてる。
- EXとCXの相関が認められた例 (一部抜粋)
- IT企業 EX:良い仕事に対する認知・賞賛 と CX:問題解決力に対する評価、顧客満足度
- レストラン EX:従業員同士における個人の尊重 と CX:料理のおいしさ評価
- 保育施設 EX:適切な担当業務量、ウェルビーイングへの配慮 と CX:親による知人に対する推奨意向
Qualtrics Cross XMでは、従業員アンケート、顧客アンケート、自社データをUI上で簡単に統合できる機能が紹介されました。生成した統合データは、Qualtricsの持つ統計分析や言語分析、要因分析などの機能でUI上でクイックに調べられます。EX/CXを横断してどの要素が重要なのかを把握することで、優先度判断が可能となるダッシュボードが紹介されていました。
本セッションで特に感じたポイントをまとめます。
- 取組みでのハードルと、アウトプットの紹介を通して、推進者にとって励みになるセッション。
- EX/CXの相関事例では、腹落ちしやすいものから意外なものまで上げられており、自社で取り組んだらどのような結果が出るのか楽しみになる内容でした。相関の強さや数値モデルに落とし込めたらかなり使い勝手のある分析例でした。
- Cross XMまでデータを持ってくることができれば、高度な分析スキル不要で判断材料を探せるUIを活用して、改善サイクルが早まりそうです。
- 「顧客向けの施策○○よりも、従業員に対する△△をやるほうが大切だ。数値でも判断できるし」のような楽しそうな未来に期待です。
「NPS 3.0~『顧客愛』で成長を遂げる企業の最前線」
大越 一樹 氏 // ベイン・アンド・カンパニー パートナー
本セッションは、売上などの財務評価で業績パフォーマンスを図るやり方ではなく、顧客の豊かな生活実現度で業績パフォーマンスを図るアプローチを推奨・紹介する内容でした。
CXを上げると業績も良くなるよね、というざっくりした認識ではなく、
CXの評価指標を織り込んだKGIを定め、経営全体で追っていくことで業績向上を目指す方法を論じています。
この手法を採用することで、EX/CXの取組みが「コストセンター」ではなく、業績向上に直結する「プロフィットセンター」と定義できる、というメッセージで熱く語っていました。
顧客ロイヤリティ(NPS)で成長エンジンを回す
顧客愛での成長がどの程度大きいかは以下で紹介されました。
2001年に『ビジョナリーカンパニー2:飛躍の法則』で紹介された企業群はその後10年で企業価値は半減。
他方、『ネット・プロモーター経営』で上げられたリーダー企業は5.1倍に成長。
T-Mobileが業界最下位から満足度トップへ躍り出たことも紹介されていました。
解約手数料の撤廃など顧客目線での施策を数多く実施。飛躍を遂げます。
他企業も追従したものの、T-Mobileはトップ継続中とのこと。
顧客愛を成長エンジンとして駆動させるトレンドの一端として
NPS2.0 顧客満足上げれば多分業績伸びるよね、というおぼろげな相関
NPS3.0 ドライバー指標を狙って業績向上にアクティブに取り組む方向性
と解説されていました。
NPS(ここでのSはScoreではなく、SystemのS)を回すときには、
個人として改善ループを回す、組織として事業方針・仕組みに反映する、の両面を抑える必要性が上げられています。
後者の組織としてループを回すにあたって、ファン顧客を起点としたプロモーター獲得成長(EGR)を定義しています。具体的には
売上げ継続率+プロモーター獲得型新規顧客数
のようにCX評価の色を強く含むKPIを定義して、KGIとして追っていく方法です。
NPSを数ある指標の一つ、参考指標などと置いておくのではなく、積極的に追っていく指標にすることでCXをスローガンではなく、業務に編み込むようなかたちです。
顧客体験マネジメント 進化の最前線
NPSは時代とともに使われ方が変わってきています。
2000年代 批判を減らし改善していく。NPSスコアを把握していく。
2010年代 オムニチャネル化が進むにあたって膨大になっていく顧客接点と顧客体験のうち、どれにリソースを投じていくべきかの判断指標としての活用。
2020年代 個々人レベルでのリアルタイムアクション、NPS変動の予測など、より即時性や自動化が進む見込み
接点毎のリソース配分最適化の事例として、銀行が挙げられていました。
- 預金・支払の接点:デジタル完結が選好される。NPSへの影響大きいが、顧客対応単価コストは低い。
- 口座開設・トラブル対応:対人対応が選好される。NPSへの影響はそこそこ、顧客対応単価コストは高い
というように、接点毎にNPSへの影響度と発生するコストを比較して、NPS向上の投資対効果を最大化するやり方です。
自動化を進めた事例としては、カナダロイヤル銀行の事例が挙げられていました。
- AIを使って顧客の資本管理をパーソナライズ
- 金融取引履歴でアドバイスをプッシュ
- 出費状況から月次の必要予算変更をレコメンド
- 出費傾向とキャッシュフロー履歴から、貯蓄に回せる資金を自動で振り替え
これらの結果、顧客は進んでオンラインへのシフトをおこない、解約率の低下や貯蓄額150ドルの向上が実現されたとのことです。
3つめの貯蓄できそうだから貯蓄しておくね、の自動化は顧客も銀行がWin-Winのかなり尖ったアイデアと思います。
本セッションのまとめページを引用いたします。
「顧客愛」=成長エンジンであり、プロフィットセンター(投資機会)。顧客ロイヤルティを高めて「ファン顧客」を作り出すことは、自社の長期・持続的な成長につながる。
顧客の期待値に応えるには企業側のケイパビリティ進化が必要。一方で、顧客接点のデジタル化や顧客データの収集・蓄積がすすむなかで、NPSと顧客データを組み合わせることで、個々人の顧客体験を可視化・向上できる可能性が急速に広がっている。
顧客体験の「構造改革」を進めていくためには、データの最大活用に加えて、カスタマージャーニーの全体戦略や、社内の動き方(オペレーティングモデル)も変革していくことが必要。
次回はビックカメラ様、クボタ様のセッションのレポートをお送りする予定です。
公開しました:2回目の記事はこちら
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