外資SaaSベンダーの「中の人」だったから言える、日本企業が損している付き合い方
自分はかつてアドビ・オムニチュア(現Adobe Analyticsを作った会社)で働いていました。いわゆる外資テックベンダーの中の人だった経験があります。
今はエクスチュアとしてクライアント側に立って、AdobeやSnowflakeといった外資ベンダーと日々付き合っています。両側を経験しているからこそ言えることがあるんじゃないかなと。
日本企業はベンダーとの付き合い方で、かなり損をしているケースが多いです。
耳が痛い話もしますが、知っておいた方が絶対にいいので書きます。
まず、偉そうにするメリットは何もない
日本のビジネス慣習に「お客様は神様」という言葉がありますよね。国内ベンダー相手なら通用する場面もあるかもしれません。でも外資SaaSベンダーに対してその感覚で接すると、確実に嫌われます。
あなたがそうだというわけじゃないんですが、そういう人結構多いんですよ。文章だと冷たくなるじゃないですか。あと、ふざけたバグとか緊急性高い障害の時ってどうしても感情高ぶるから、その時そうなるのはわかるんです。
ただ、ナチュラル上目線の人もいるんですよねw そしてそういう人は基本的に優先度下げられます。逆の立場で考えてみてください。
ぶっちゃけて言うと、グローバルで見たとき、日本企業のほとんどは「普通サイズ」です。
大手外資SaaSのグローバルクライアントには、年間契約額が数億・数十億円のクライアントがごろごろいるんです。million dollar deal(約1.5億円以上)でようやく「いいお客さん」扱いになる世界なんですよね。日本国内で「うちは大口客だ」と思っていても、グローバルの文脈では中堅以下というケースは珍しくありません。
で、ここが重要なんですが、無愛想にする意味がないし、上目線でいる意味もないんです。なんならむしろマイナスです。そういう動きをしていること自体が、そういう人が下に見ている人たちに下に見られるムーブなんですよね。
これは責める話じゃないですし、今読んでいるあなたがそういう人ではないと思います。ただ、結構いるんでw参考です。現実を知った上で付き合い方を考えましょうという話です。
そのベンダーの「日本市場比率」を見ておくといい
あまり知られていませんが、そのベンダーにとって日本市場が全売上の何%を占めるかで、日本への優先度が大きく変わります。
目安として10%を超えていれば「優良市場」として見られていると思っていいです。日本法人に権限が与えられて、意思決定も早くなります。逆に日本比率が低いベンダーは、日本法人のリソースが薄くて、場合によってはAPAC担当が兼務していたり、プロダクトのローカライズも後回しになったりします。
新しいツールやベンダーと付き合う前に、その会社の日本市場での存在感をざっくり調べておくのはおすすめです。日本のユーザーコミュニティの規模、日本語ドキュメントの充実度、日本人社員の人数あたりが手がかりになりますね。
ベンダーは常に「この先いくら売れるか」を見ている
ここは中の人だったからこそ言える話です。
ベンダーの営業は常に「アップセル・クロスセル」を追いかけています。現状維持の契約に興奮はないんです。この先どれだけ伸びしろがあるかで、担当者のモチベーションも、社内での優先度も変わってきます。
実際、自分たちも某SaaSで一気に前年比4倍の年額にアップした時期がありました。その瞬間だけ、担当者の対応が明らかに変わったんです。レスが早くなって、上位担当者が顔を出すようになって、特別対応が増えました。
ただ、その後「当面アップセルはなさそう」という気配を感じた瞬間に、蜘蛛の子を散らすように対応が変わりました。
これは正直、気持ちのいい話じゃないです。でも現実なんで知っておいてほしいと思います。
コツは「まだポテンシャルがある」と思わせることです。全部出し切った感を出さないようにツマミをいじるのがポイントですね。これは自分も気に入らないんですが、実際そうなってるので教えます。
日本企業がベンダーに嫌われる3つのムーブ
中の人として働いていた時に、「またか」と思うパターンが何度もありました。
逆に言うと、自分が接客していてこれの逆の動きをしてるだけで、めちゃくちゃ良くしてもらえたということでもあります。知名度・規模に劣る当社が、そのベンダーの日本最初のパートナーになるという重要な選定コンペで勝利を収めたこと多数だったんです。
①「情報交換しましょう」アポ
目的が不明確なまま「とりあえず話しましょう」で時間をもらおうとするやつです。外資ベンダーの営業は1時間のミーティングに対して明確なROIを求めています。「何のために会うのか」「どんな課題があるのか」「なぜ御社に興味があるのか」を事前に示せないアポは、相手の時間を奪っているだけです。
②展示会での「デモして」
自分たちが何者で何に困っているかを一切言わずに、ただデモを要求するパターンです。ベンダーのブース担当はその場で何十社と接するんです。文脈のない「デモして」は記憶にも残らないし、後日フォローする優先度も上がりません。よくある展示会でウザく声がけしてきて名刺取ることだけを目的にしてるあれとはちょっと違うんです。特にベンダのエンジニアが立ってる時はそんなつもりは全く無く、逆にうまく質問していけたらかなり快く教えてもらえます!
③テクサポでのムダな時間の奪い方
問い合わせること自体は悪くないです。ただ、「どうでもいいことに永遠とこだわり続ける」「一般用語の意味を偉そうに聞いてくる」みたいなパターンが結構あります。
例えば、PVが1件合わないことに「原因は?」「再発防止策は?」と詰めてくる。ビジネスに致命的な影響がないのに延々と追及する。あるいは、別であった実話ですが「メジアンってなんですか」みたいな一般用語を、「俺は偉い、詳しい、天才」って自称してたコンサルが問い合わせてきたときには、正直かなりピキっときました。
あと、再現性を出すための情報を全然提供してこないで「動きません!」だけ投げつけてきて、回答したらその回答はガン無視。そういう人は後回しになっていきます(自業自得)。
ちなみに、ちょっと別の話で商談等で話してる時もそうだしセミナーなどを聞いててもそうですけど、「そんなの知ってる〜」とか「でも〜」という反応する人多いですよね。でも基本的にベンダー相手には「ワオ!いいね!」的に全肯定しときゃいいんです。疑問になった点は聞くけど、相手のアピールを否定する合理的メリットなしです。
対等でフェアに交渉することをおすすめします
値引きしてほしいのはもちろんですが、「じゃあこちらは何をGiveするの?」という視点が大事です。
感覚的に一番効くのは、ベンダーの四半期・決算期の時に「今この場で(もしくは一両日中とか)サインします。だから引いてください!」みたいな交渉ですね。自分が決裁権者で署名者じゃないとできませんが、事前に内部ですり合わせておいた上でそういうお芝居をするのもありです。
あとは複数年契約するとかも有効です。
「ただ安くして」はTaker的な動きなので、それで値引き獲得もできるでしょうけど、取引先としても、人としても下に見られます(会社も、あなたも)。
契約額が小さくても優遇される方法がある
ここからが本題です。グローバル規模で見れば一般人でも、ベンダー担当者に「この会社は大事にしたい」と思わせることはできます。
①フィードバックの質
プロダクトの改善点や市場での課題を、具体的かつ建設的に伝えられるクライアントはベンダーにとって貴重です。売上規模に関係なく、プロダクトチームに名前が届くようになります。
②事例・登壇への協力
導入事例のインタビューに応じる、ユーザーカンファレンスで登壇するといった協力は、ベンダーにとって営業ツールになります。これをできるクライアントは少ないので、やるだけで一気に関係が変わります。
③肯定者であること(ファンだとなお良い)
SNSで言及する、コミュニティに参加する、社内で推薦するといった行動が積み重なると、担当者の上司まで「あの会社は大事にしよう」という認識が広がっていきます。
ファンが一番いいけど、肯定者であることが大事ですね。肯定できないSaaSなんか解約すればいいんですよ。
まとめ:自分たちの立ち位置を知った上で、協力的に付き合う
要するに、自社がそのベンダーの中でどのくらいの位置にいるかを客観的に把握しておくことです。その上で、上目線にならず、協力的な姿勢で付き合うこと。これだけで、同じ予算を払っている他社より明らかに良い扱いを受けられます。
ベンダーの担当者も人間です。一緒に仕事をして楽しい相手、フェアに付き合ってくれる相手を優先したいのは当然ですよね。金額より関係性の質を上げる方が、長期的にはずっとコスパがいいんじゃないかなと思います。
エクスチュアができること
こうした外資ベンダーとの付き合い方の設計や、実際の交渉をサポートすることも、エクスチュアの得意分野の一つです。Adobe、Snowflake、KARTE等のベンダーとは長年の関係があるので、どういう接し方が効果的かは肌感で分かります。
ベンダー選定から導入、運用まで一緒に伴走できるので、気になることがあればお気軽にご相談ください。
